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ゆりら文庫

創作小説ブログ

もしも私が「夢十夜」を書いたら ~第九夜

もしも私が

見ず知らずの海岸で、自分は静かに空を見上げていた。浅緑色に曇る空に向かって、透明な円筒がまっすぐ伸びている。地面から斜めに続くそれは、人ひとりであれば入れそうな大きさだったので、自分はそれが宇宙へと続く道なのだと思った。

気がつくと辺りは無重力の真暗で、星が瞬き、眼下には青く光る故郷の惑星があった。自分はもう宇宙にいて、すぐそこにある銀色の軽い扉を開ければ大地へと帰る道があるのだと知っていた。

扉の取手をひねると、その先には浅緑色の空が広がり、今しがた自分が佇んでいた海岸が僅かながら遥か下に見て取れた。後ろ手に扉を閉め、無重力の身体を辛うじて操りながら、目の前に据えられた小さな銀色の足場に降りたった。その足場から、あの透明な円筒を一直線に滑降していけば、大地に降り立てるのだと分かった。

足場の銀色の手すりを握りしめながら慎重に円筒の中に腰を下ろした自分は、そっと手すりから手を離した。一息に滑降してしまうという不安やらとは裏腹に、鉄板敷きの滑り台は凹凸だらけのうえ傾斜が緩く、幾度となく途中で止まった。止まるたびに、足で底を蹴り進まなければならなかった。自分は前に滑った何者かが落とした物を、途中途中で拾いながら進んだ。それは色味や形、大きさからして西瓜の種らしかった。

どれほどの時間がかかったのかは知れないが、とうとう自分はあの海岸へ降り立つことができた。もと来た道を振り返り仰いだ時、自分が見たのはあの透明な滑り台ではなく、自宅の天井であった。