ゆりら文庫

創作小説ブログ

もしも私が「夢十夜」を書いたら ~第八夜

気がついた時、そこは自分がよく知っている、冒険もののテレビゲームの世界であるとすぐに思った。友人や自分の身なりと所持する物がいかにもそれで、だからその薄色の壁をした廃工場にいる目的も、当然のごとく知っていた。

ならば進むより他無いと、二人で連れ立って螺旋をえがいた鉄階段を降りていく。しかし踊り場に差し掛かった所で、全身を鎧で覆った大男が、巨大な斧を振り回して自分たちに襲いかかった。螺旋の内側の方へと道が続いていたので、すばやく大男の脇をすり抜けて道へ進もうと決めた。自分はこれを上手いようにやってのけたが、友人は少しばかり逃げ遅れて軽傷を負った。

大男は追いかけてくることはなかったが、道を進むうちに暗くなり、どこかに息を潜めていた小鬼たちが一斉に二人めがけて跳びかかってきた。しかし自分たちはその敵襲に少しも動じることなく、背中にかけた剣を抜き放ち、小鬼めがけて切りかかった。無傷の自分が構えた剣からは光が放たれ、二三の小鬼をころりとまとめて退治した。

やがて小鬼もすっかりいなくなると、ふいに自分の剣が青く輝き、見覚えのある青い少女の精霊が姿を現した。この先に、廃墟を支配する悪の主がいるとか、そんなことを言っていた。友人を促して先へ進むと、梯子が壁伝いに上へと伸びているのが見えた。梯子は途中から、人が一人やっと通る具合の穴に隠れて見えなくなっている。穴の中で敵が待っているかもとか、それを心配することもなく、自分が先に梯子を上り始め、後に友人が続いて来る。

穴の先には小さな店があった。後に続いて進んでいたはずの友人が、いつの間にか自分を追い越して待っていた。自分はそれを微塵も不思議に思わず、ただ行く先に姿を現したその小さな露店を見て、駅の売店をふと思った。

ついに自分たちは、夜明けまでに闇の向こうにいる悪の主の姿を見ることさえ叶わなかった。