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ゆりら文庫

創作小説ブログ

もしも私が「夢十夜」を書いたら ~第六夜

もしも私が

自宅の最寄り駅のホームで、学校に行くための電車を待っている。しかし、次の電車に乗ったとしても、遅刻するのは確実だった。それで自分は一時も落ち着くことなく電車を待っていた。

すると不意に駅のベルが鳴り出し、当初の時間よりも早く電車が駅にやってくる。自分は微塵も不思議がることなく、ただ遅刻を免れる喜びからその電車に意気揚々と乗り込んだ。電車がゆっくりと動き出す。途端に車体が大きく傾いた。電車はさながらジェットコースターのように上り下りを繰り返し、猛スピードでどこかに突き進んでいく。自分は浮遊感を感じながら、とにかく一刻も早くこの電車が止まることを祈り続けた。

程なくして電車は停止し、ドアが開いた。降りてみると、そこは見ず知らずの洋館の前だった。白壁に上品な漆黒の装飾が施されたそれは、一見すると教会のようにすら見える。自分の足は自然と木製の扉の方へと吸い寄せられ、屋敷の中へと入って行った。中は薄暗く、時々見知らぬ人々とすれ違う。やがて自分は屋敷の女主人らしき人と出会い、見せたい物があるからついて来なさい、というようなことを言われた。女主人に案内された先にあったのは、一枚の絵であった。額縁に納まったそれは、真っ白な紙に黒いインクで、不精ひげを生やした男の顔が描かれているという物であった。唐突に女主人から「この絵を買いなさい」と告げられた。自分はいくら絵が好きでも、その絵はどうにも好きになれなかったし、第一学校に行かなければならない。だがどうしてもはっきりと断れなかった。なおも陰鬱な口調で懇々と頼み続ける女主人に押し切られ、自分はついに買うと返事してしまったらしい。

気がつくと自分は、大きな籠の中に連れ込まれていた。根拠はないが、あの恨めしい男の絵を買ったせいで、これからどこかに連れていかれるのだと思った。そして、近くに立つきらびやかな衣装を身にまとった少女戦士たちが、自分を成敗したのだということもまた、根拠なく思った。