ゆりら文庫

創作小説ブログ

もしも私が「夢十夜」を書いたら ~第二夜

こんな夢を見た。

目が痛くなるような赤が視界いっぱいに展開している。赤く蛍光色に光る画面に、白い文字が浮かび上がっている。字は縦長でデジタル表現の算用数字を思わせたが、かなり小さく、それを判読することは叶わない。

気がつくと自分の身体がいつの間にか横たえられている。横になったまま見上げている黒い大型スピーカーの上部には、あの赤い画面がちらついている。画面を見つめるのを止めて右に寝返りをうつと、ざらりとした床が顔に触れたのを感じた。目の前には段差が壁のようにそびえ立っている。身体を起こして段差を上がろうとしたが、体がどうにも重い。自分が寝かされている床にだけ重力が余分にかかっているかのように、下方向の不可思議な力が起こそうとする体を引き戻す。それでも自分の左足が段差に乗っかり、左ひじがかかる。力を振り絞って上の段、と言ってもわずかに十センチ程だったが、そこに自分の身体を乗せることができた。突然、先ほどのことが嘘のように体が軽くなったので、やっと安心して身体を起こすことができた。

見渡すとそこは、懐かしい小学校の音楽室に似ていた。ざらりとした古い布が張られた灰色の床、白い塗装の壁、目の前にはピアノ、覚えのある場所に、自分と年の頃が同じ少年少女が数人集まっている。

ふと足元に視線を落とすと、床から白い、古びた包帯のような布がゆるりと伸び、足に絡もうとしていた。足をとられてはならない。足を封じられたら最期、たちどころに床から湧き出す大量の包帯の餌食になるのだ。しかし少しでも足を動かせば、包帯ははらりとほどけて消える。ほどけては絡み、絡んではほどける。それを二度三度繰り返しながら、自分は部屋の隅に作られていた三角の段差の上に向かった。そこが安全地帯と思った。同じことを思ったらしい二人の少女が、押し合いへし合いして三角の段差に乗り込んでくる。しかし包帯は相変わらず、つま先立ちしていた自分や他の少女たちの足を狙った。安全地帯は存在しない。絶え間なく部屋を動き回り、振り払い続けることこそが一番の安全。そう確信した自分は夜明けを告げる音が聞こえる時まで、ただこの狂気の部屋を歩き回り続けた。