ゆりら文庫

創作小説ブログ

もしも私が「夢十夜」を書いたら ~第一夜

こんな夢を見た。

木製の、恐ろしく古びたトロッコに乗り、すごい勢いで洞窟を進んでいく。あまりに速いもんで、辺りの景色が一瞬、白んで見えるほどだった。しかし目を凝らせばそこはまぎれもない、赤茶けた地面が続く、暗い洞窟である。そこがまた開けた場所なので、遠くは墨色に塗りつぶされて見えない。ただ地面と同じ色の岩が、鍾乳洞のように尖り、それが大小連なって下がっているのがよく見える。そんな場所を、時々がたんと揺れることもあったろうが、不思議なほどに音もなくトロッコは進み、ただ同じような景色が前から来て瞬時に後ろへと消えていく。

トロッコの大きさは、人が二人やっと乗れるといった具合だった。自分の後ろにもう一人、男が乗っている風だったが、顔が見えない。それで男が若いのか年老いているのか、皆目見当がつかない。第一すごい速さで進んでいるのだから、よそ見が出来る状態でもなかった。ただ後ろの人間が男だということだけは分かった。

突然、トロッコが前方に大きく傾いた。突き出した岩にただまっすぐ沿わせたレールに従い、トロッコは前に直角に傾き、あっという間に逆さまになったと思うと、がくん、と衝撃を感じ、車輪が外れた。

古い木製のトロッコと、誰かと、自分が、墨で塗りつぶされた奈落に落ちていくのを見届けた。