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ゆりら文庫

創作小説ブログ

谷山浩子曲イメージ

七角錐の少女 ~後編

どうしていつまで経っても、たどり着かないのだろう。もう、目の前に確かに見えているのに。「はぁ、はぁ、はぁ…………」僕はやりきれない思いでいっぱいになって、歩みを止めた。そして、そのまま、膝からガクリと地面に崩れ落ちた。もう歩けない。汗が全身か…

七角錐の少女 ~前編

静寂。世界は、揺るぎない数の秩序に守られている。今、その透き通る藍色の闇夜に向かって、どこまでも高く伸びる銀色の円錐が1つ。円錐はあまりにも細長すぎて、一本の輝く糸のようにすら見える。一見すると分からないが、まぎれもなくそれは空高く伸びる…

ダイエット ~後編

「真唯の様子が明らかにおかしいんです。ここ数日、全く食べ物を口にしないんです。……そんな、本当なんですよ!ええ、もう、白いご飯さえ一粒も食べてなくて……」真唯の母親が学校に相談に来ていたのを、友人達は偶然耳にしてしまった。「何にも食べてない………

ダイエット ~前編

真唯は自室のデジタル式体重計の上で、目を輝かせた。 「……37キロ、やった…!一気に3キロも…。ついに40キロ台切った……!…っとと」 体重計から降りる真唯はふらりとよろけ、床にペタンと座り込んだ。目を細めて窓の外を仰ぐ。 もうここ数日、彼女は自室から…

気づかれてはいけない

ここはどこだろう。灯りの少ない夜の街角、古びた赤レンガの壁沿いに、真っ白なドレスを着た一人の女性が歩いている。絹糸のように透き通った金髪に、大きな鏡のような薄墨色の瞳。舞踏会にこんな人がいたら、誰も放っておかないんじゃないかな。でも、アン…

悪魔の絵本 ~4(最終回)

アパートが見えて来た。1階をそれとなく見て回る。表札にあむかの名前はない。なら二階か。階段を駆け上がる。鉄階段の音が響く。表札をずらりと見る。 あった。里見あむか。 勇介はドアを力任せに開けようとした。鍵がかけてある。開かない。ガンガンと乱…

悪魔の絵本 ~3

翌朝、小さなアパートの二階。あむかは自室で電灯も点けず、昨日の絵本を手に取っていた。そばには、持ち手が折れて短くなった筆、薄汚れた水入れの小瓶、そして鮮やかな絵の具を盛ったパレット。 「もし本当にこの本に悪魔がいるのなら……、お願い、わたしの…

悪魔の絵本 ~2

公園の白い時計が、4時45分を指そうとしていた。日は大分傾き、辺りはうっすらとオレンジ色に染まり始める。すずかけの並木は、路に長い影を落としていた。 「そろそろ片付けて帰ろうかな?…のど乾いた~。何か飲み物買って来ようっと」 あむかは財布を持っ…

悪魔の絵本 ~1

土曜日。快晴の町。すずかけ公園の一角に声が響く。 「こんにちは~!アトリエ・アムカにようこそ♪」 里見あむかが公園の一角でアトリエを始めて、2年目の春が来た。高校卒業後、イラストレーターになるという夢を追いかけて、日々独学にて勉強中。毎週土曜…