ゆりら文庫

創作小説ブログ

もしも私が「夢十夜」を書いたら ~第十夜(最終回)

最寄り駅で荷物を持ち、電車を待っている。傍らには友人が一緒にいる。彼女とは中学から高校までの学校生活を共にした、たいへん気心の知れた仲である。 やがて客車を引いた蒸気機関車が、その黒い巨体をガシュガシュとうならせて駅に入って来る。客車には前…

もしも私が「夢十夜」を書いたら ~第九夜

見ず知らずの海岸で、自分は静かに空を見上げていた。浅緑色に曇る空に向かって、透明な円筒がまっすぐ伸びている。地面から斜めに続くそれは、人ひとりであれば入れそうな大きさだったので、自分はそれが宇宙へと続く道なのだと思った。 気がつくと辺りは無…

もしも私が「夢十夜」を書いたら ~第八夜

気がついた時、そこは自分がよく知っている、冒険もののテレビゲームの世界であるとすぐに思った。友人や自分の身なりと所持する物がいかにもそれで、だからその薄色の壁をした廃工場にいる目的も、当然のごとく知っていた。 ならば進むより他無いと、二人で…

もしも私が「夢十夜」を書いたら ~第七夜

自宅の二階の寝室にいる。何やら無性に空が飛びたくなって、一心にその場で跳び上がることを繰り返していた。いくら力の限り両足で踏み切ってみても、身体は重力に従って落ちるばかりである。 それが何も変化しないことを知り、飽きて兄の部屋に踏み込んだ時…

もしも私が「夢十夜」を書いたら ~第六夜

自宅の最寄り駅のホームで、学校に行くための電車を待っている。しかし、次の電車に乗ったとしても、遅刻するのは確実だった。それで自分は一時も落ち着くことなく電車を待っていた。 すると不意に駅のベルが鳴り出し、当初の時間よりも早く電車が駅にやって…

もしも私が「夢十夜」を書いたら ~第五夜

こんな夢を見た。 居間のテレビに目をやると、世界の恐怖映像を集めたという番組が放送されている。映っているのは、薄暗い室内にいるスキンヘッドの白人男性。白目の部分に妙な模様が浮かび上がっていることを、自分の目を指さしながら告白している。 なお…

もしも私が「夢十夜」を書いたら ~第四夜

なんでもそこは薄暗い劇場らしく、わずかに傾斜のついた広い屋内に、座席がたくさん並んでいる。その座席の列を二、三列挟んだ向かいに、細身の女が立っている。年の頃は自分より幾分上であろうが、極めて若々しかった。艶やかな長髪を後ろで一本に束ね、パ…

もしも私が「夢十夜」を書いたら ~第三夜

こんな夢を見た。 雲一つなく晴れ渡った濃い青の空と、同じくだだっ広い地面が広がる。白いコンクリートの地面には何もなく、それが地平線まで続いていたので、自分はここが飛行場だと思った。年の頃が自分と同じ少年少女がたくさんと、大人が数人いたので、…

もしも私が「夢十夜」を書いたら ~第二夜

こんな夢を見た。 目が痛くなるような赤が視界いっぱいに展開している。赤く蛍光色に光る画面に、白い文字が浮かび上がっている。字は縦長でデジタル表現の算用数字を思わせたが、かなり小さく、それを判読することは叶わない。 気がつくと自分の身体がいつ…

もしも私が「夢十夜」を書いたら ~第一夜

こんな夢を見た。 木製の、恐ろしく古びたトロッコに乗り、すごい勢いで洞窟を進んでいく。あまりに速いもんで、辺りの景色が一瞬、白んで見えるほどだった。しかし目を凝らせばそこはまぎれもない、赤茶けた地面が続く、暗い洞窟である。そこがまた開けた場…

七角錐の少女 ~後編

どうしていつまで経っても、たどり着かないのだろう。もう、目の前に確かに見えているのに。「はぁ、はぁ、はぁ…………」僕はやりきれない思いでいっぱいになって、歩みを止めた。そして、そのまま、膝からガクリと地面に崩れ落ちた。もう歩けない。汗が全身か…

七角錐の少女 ~前編

静寂。世界は、揺るぎない数の秩序に守られている。今、その透き通る藍色の闇夜に向かって、どこまでも高く伸びる銀色の円錐が1つ。円錐はあまりにも細長すぎて、一本の輝く糸のようにすら見える。一見すると分からないが、まぎれもなくそれは空高く伸びる…

ダイエット ~後編

「真唯の様子が明らかにおかしいんです。ここ数日、全く食べ物を口にしないんです。……そんな、本当なんですよ!ええ、もう、白いご飯さえ一粒も食べてなくて……」真唯の母親が学校に相談に来ていたのを、友人達は偶然耳にしてしまった。「何にも食べてない………

ダイエット ~前編

真唯は自室のデジタル式体重計の上で、目を輝かせた。 「……37キロ、やった…!一気に3キロも…。ついに40キロ台切った……!…っとと」 体重計から降りる真唯はふらりとよろけ、床にペタンと座り込んだ。目を細めて窓の外を仰ぐ。 もうここ数日、彼女は自室から…

気づかれてはいけない

ここはどこだろう。灯りの少ない夜の街角、古びた赤レンガの壁沿いに、真っ白なドレスを着た一人の女性が歩いている。絹糸のように透き通った金髪に、大きな鏡のような薄墨色の瞳。舞踏会にこんな人がいたら、誰も放っておかないんじゃないかな。でも、アン…

悪魔の絵本 ~4(最終回)

アパートが見えて来た。1階をそれとなく見て回る。表札にあむかの名前はない。なら二階か。階段を駆け上がる。鉄階段の音が響く。表札をずらりと見る。 あった。里見あむか。 勇介はドアを力任せに開けようとした。鍵がかけてある。開かない。ガンガンと乱…

悪魔の絵本 ~3

翌朝、小さなアパートの二階。あむかは自室で電灯も点けず、昨日の絵本を手に取っていた。そばには、持ち手が折れて短くなった筆、薄汚れた水入れの小瓶、そして鮮やかな絵の具を盛ったパレット。 「もし本当にこの本に悪魔がいるのなら……、お願い、わたしの…

悪魔の絵本 ~2

公園の白い時計が、4時45分を指そうとしていた。日は大分傾き、辺りはうっすらとオレンジ色に染まり始める。すずかけの並木は、路に長い影を落としていた。 「そろそろ片付けて帰ろうかな?…のど乾いた~。何か飲み物買って来ようっと」 あむかは財布を持っ…

悪魔の絵本 ~1

土曜日。快晴の町。すずかけ公園の一角に声が響く。 「こんにちは~!アトリエ・アムカにようこそ♪」 里見あむかが公園の一角でアトリエを始めて、2年目の春が来た。高校卒業後、イラストレーターになるという夢を追いかけて、日々独学にて勉強中。毎週土曜…

開設のごあいさつ

このたび、当小説ブログ「ゆりら文庫」を開設しました。 このブログは、私ゆりらが書いた創作小説を投稿させていただくものです。といっても現時点では、曲イメージ作品など、何かしらの創作物に影響を受けた二次創作的作品が多くなることが、比較的簡単に予…